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多層世界の歩き方
エントランス / うしお鶏
ギャラリーA
相川勝
海野林太郎
ホズニ・アウジ
谷口暁彦
青柳菜摘+佐藤朋子
臼井達也
セマーン・ペトラ
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ハイパーICC
二〇二〇年の新型コロナウイルス感染拡大以後は、日常的に多くのコミュニケーションがネットワークを経由して行なわれるようになるなど、情報世界と現実世界が重なり合った多層世界は、私たちの活動の「場」として急速に拡大している。現在、ウェブサイト上で開催される展覧会など、以前とは異なる作品発表が行なわれるようになり、実際の展覧会の再現をオンラインで、ヴァーチュアルに体験できる。そのような鑑賞や体験の方法が変わりつつある状況下で、表現や作品自体もまた変化している。
「コモングラウンド」は、フィジカル空間=現実世界とデジタル空間=情報世界を重ね合わせ、人とデジタル・エージェントが共存できる世界を実現する。スマートシティと呼ばれるような未来都市では、現実世界と情報世界が「デジタルツイン」の状態となり、相互にシームレスにつながっている。ロボットやAIなどの「非人間エージェント(Non-Human Agent)」がデジタル側の空間情報を読み取り、その情報が自動的に現実空間にも反映される。
これからは、現実世界と情報世界が、たんにアナログとデジタルの二階調なのではなく、さまざまなグラデーションとなって相互に補完し合うことで、より多様な価値を生み出すことができるようになる。この多層世界からインスパイアされた表現と、テクノロジーが実現するかもしれない未来像を重ね合わせ、情報から感じるリアル、リアルから感じる情報の間を遊歩するような感覚が求められている。
仮想空間では、プレイヤーは記号としてのアヴァターであり、擬似的に誰かであることの記号として認識されるにすぎない。プレイヤーが集まる空間は、実際には存在していないし、プレイヤーも実際に集まっているわけではない。「同じ場所にいて、同じ時間を共有していたと思っていたものが、触れることすらできないくらいに本当はバラバラなんだ」という認識は現在多くのゲームでフォトモードを見つけることができる。フォトモードで撮影される写真の多くは、主にゲームのファンによって撮影されていて、ヴィデオゲームの楽しみ方の一つとして定着しつつある。
アーティストが写真を撮影するためにゲームを改造する中で、ゲームプレイ自体の目的が変化することで、現実の社会とヴィデオゲームの関係を見つめ直す契機となっている。インゲームフォトグラフィーは、たんにデジタルなゲームの世界をデジタルイメージとして撮影するだけの行為ではなくなり、デジタルなゲームの世界から現実の世界を複眼的に撮影する行為へと変化するだろう。
現実は空想に似てしまう。あるいは超えてしまうことがある。そうした悲劇が実際に起きてしまうことは、たしかに悲劇である。サイエンスフィクションとは、誇張した現実によって、現在を批評するものであるが、そうしたシミュレーションでは、ネガティヴな可能性を最大値に設定することで、最悪のケースを想定することができる。そして、その可能性としての世界が、批評、教訓となるように機能していた。
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