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アンナ・リドラー
《モザイク・ウイルス》2019年
リアル

アンナ・リドラー プロフィール


3台のモニターに映るチューリップの映像が,その姿を刻々と変化させていきます.つぼみから花が咲き,さらに異なる品種のチューリップへと,ゆっくりと次々に変化していく映像は,「敵対的生成ネットワーク(GAN=Generative Adversarial Networks)」と呼ばれる,機械学習によるイメージ生成モデルを使用して制作されています.

この作品は,「チューリップ・バブル」と呼ばれる,1630年代のオランダで起こったチューリップの球根の価格の急騰と暴落に想を得て制作されています.記録された世界初のバブル現象とされるこの出来事に,リドラーは現在の暗号通貨の投機との類似性を見出し,機械学習によって生成されたチューリップのイメージをビットコインの価格によってコントロールし,時間とともに変化させることで市場の変動を示し,その関係を明示しています.

タイトルは,チューリップのみが感染するモザイク・ウイルスによって生まれた変種が,爆発的な人気と価格の高騰を生み出したことに由来しています.このウイルスは,花びらに縞模様を発生させ,当時の投機的な価格上昇を引き起こす原因となりました.この作品では,縞模様がビットコインの価格に依存し,市場の変動とともに変化しています.

この作品のためにリドラーは,機械学習のためのチューリップ画像のデータセット(学習のためのデータの集合)を独自に作成しました.それは,何千枚ものチューリップの写真を使ったインスタレーションとしても発表されており,データセットを構築するために必要なスキル,労働力,時間など,通常は表に現われない機械学習の人間的要素をあきらかにするものでした.

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