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emolingual(大原嶺,藤井樹里,青田香菜子)
emolingual
リアル

大原嶺 プロフィール 藤井樹里 プロフィール 青田香菜子 プロフィール
《emolingual keyboard》2019年

emolingual(エモリンガル)とは「emoji(絵文字)言語を運用することができる状態」を指す造語で,絵文字にまつわる創作活動や開発を行なうプロジェクト,またそのチームの名称でもあります.

2010年に文字規格の国際基準であるUnicodeに採択されたことをきっかけに,絵文字は現在では「emoji」として世界中の人に使われています.絵文字の人気がUnicodeそのものの普及にも大きく寄与したという説もあるほどで,2021年現在では実に約3,600種類の絵文字がUnicodeに登録されています.優れた視覚的表現力と普遍性からコンパクトに情報を伝えられる一方で,その解釈には地域性やそこに根差した文化的背景が反映される部分も大きく,絵文字による表現の可能性は,その揺らぎ自体をプラスに変換しながら今後も拡大していくことが予想されます.一方で,膨大な選択肢の中から最適な絵文字を直感的に選択することが難しいなど,絵文字普及にあたっては技術的課題もまだ多く残されているといえます.emolingualは,インタフェースの開発やグッズの提案に至るまで,絵文字に対する多様なアプローチを通して,言語としてのemojiのさらなる可能性を探究しています.

本展示では,プロジェクトの取り組みのなかから,440種類の絵文字を入力できる専用キーボード《emolingual keyboard》のほか,文脈に合致した絵文字を自動で推定し挿入する入力インタフェースの利用例として,慣用句や文学作品などの一般によく知られたテキスト40個を絵文字翻訳したもの,ウィキペディア日本語版に掲載されたテキストに対して自動で絵文字が挿入されていくプログラムの三つを紹介します.

制作協力:武井祥平
*本展示では,2020年度未踏IT人材発掘・育成事業の採択プロジェクト「文脈に基づいたemoji推薦とその選択インタフェースの開発」の成果が使われています.

イップ・ユック゠ユー
《To Call a Horse a Deer/
指馬為鹿(うまをさしてしかとなす)》
リアル/オンライン

イップ・ユック゠ユー プロフィール
English Version Japanese Version


この作品は,真偽問題(○×式クイズ)の形式で作られたゲーム・アート作品です.このゲームでプレイヤーが得点するには,設問ごとに付される「真実を答えよ」「嘘をつけ」という指示に抗って回答する必要があります.つまり回答者は,嘘をつくように指示された場合は設問に対する正しい答えを,真実を言うように指示された場合は間違った答えを選ばなければいけません.

イップは,この作品を共犯関係についてのゲームだと言っています.ルールに従って高い点を得ることは,より知的で知識が豊富であることを意味すると同時に,権威に順応し,服従することも厭わない面があるということを示唆します.一方で,ゲームにおける低得点は,設問について知識がないか,うまいプレイヤーではないことを一般的に意味しますが,このゲームにおいては否定すべき結果とは限りません.最低点を得ることで,プレイヤーはこのゲームのルールに遊び心を持って従わないという意思表示をすることができます.すべての答えを正しく知っていることを示しながら,このゲームのルールに抵抗し,服従しないという選択をするのです.

この作品のタイトルは,中国の古典『史記』に登場する故事成語「鹿を指して馬と為す(指鹿為馬)」を反転させたものです.秦の始皇帝が死んだ後,野心的な政治家が鹿を馬と言い張ることで,人々にそれを馬だと思い込ませ,さらに「それは鹿だ」と真実を言った者を処刑して反対意見を封じ込めようとしたという話が由来となっています.

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