couch
《Nevermore》2020年
真っ白なキャンバスのような背景の中に,二人の人物がいます.二人が筆で絵を描くように何もないところを塗っていくと,部屋のようすが少しずつ現れます.この作品では映像を合成するための「クロマキー」という技術が使われています.映像技術と絵筆を使って現れたのは,かくれていたもともとの風景でしょうか? それともこの二人の人物は新しい風景を作り出したのでしょうか?
浅尾怜子と宮﨑大樹によるアーティスト・デュオ,couchは,ものづくりの初源的,発見的方法を検証する作品やプロジェクトを展開しています.
アートの技法,コンピューティング理論,説話や寓話に連なる現実的背景をもとに,インスタレーションや映像作品を制作しています.だまし絵的なインスタレーションや電子的な映像技術に手作業を介入させるなどの手法で,技術的な方法に独自の批評的な観点を導入しています.
《Nevermore》は映像技術のクロマキー合成を使って,ありきたりな日常の光景を,絵筆で原寸大に描き戻した作品です.真っ白なキャンヴァスの背景から元の光景が少しずつ現われてきます.
助成:公益財団法人小笠原敏晶記念財団,公益財団法人パブリックリソース財団,横浜市文化芸術活動応援プログラム
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couch プロフィール
《寓話の寓話〈ウミネコ〉》 2022年
スリット・アニメーション(ストライプ状のスリットを動かすことにより絵を動かす技法)の仕組みを使って,ものがたりを語る装置です.6台のスリットのスクリーンがレールの上をゆっくり動いていきます.ドローイングの前を通ると,いくつもの場面がえがかれたドローイングが動き出します.ドローイングはばらばらに動いているように見えますが,それぞれのイメージはどこから見はじめてもよく,ひとつのものがたりとつながっていて,始まりも終わりもない,ウミネコのものがたりが語られます.
《寓話の寓話》は,スリット・アニメーションによって,ものがたりを語る装置です.複数の自走スリットがドローイングの前をゆっくり通っていくと,いくつもの時空間が描かれたドローイングがばらばらに動き出します.それでいて,すべてのイメージは,一つのものがたりとしてつながっていて,始まりも終わりもない,ウミネコのものがたりが語られます.
タイトルの《寓話の寓話(A Fable of a
fable)》には,「始まりも終わりもなく常に過程であり,構造全体の中心もなく,果てしないひろがりをもったひとつのものがたりを写し取ろうとした、あるひとつの小さくて私的な試み」という意味が込められています.
助成:公益財団法人小笠原敏晶記念財団